できる部分がふえる
獲得できる生活スキルやコミュニケーションがあります。
私達が日ごろ、何気なくおこなう歯磨きや掃除などの生活行為。その種類は幅広く、重要度も異なります。一つひとつの生活行為の意味を理解することが難しい重度の(知的・精神)障害をもつ人が生活スキルを身につけるためにはどのようなかかわりが必要でしょう?
食事、入浴、歯磨き、ひげそり、洗濯、掃除、買い物、通院、服薬。
これらの生活行為について、利用者様の「できる部分」「できそうな部分」「できにくい部分」をアセスメントし、課題を整理したうえで、職員がチームとして継続した声かけやかかわりをしていくと、ご本人の肯定的(または否定的)な意思表示がサインとして表出し、それが手がかりとなって個別支援計画や職員のかかわり方に反映されています。
このサイクルを地道に繰り返していくことで、入居当初にできなかったことが3年がかりでできるようになった例もあります。
グループホーム友では、「支援される部分を少なくし、自分のできる部分を増やすこと」を基本理念にかかげて利用者様を支援しています。
支援事例
衛生面に課題をもつの利用者様(知的障害・障害支援区分4)がトークンエコノミー法とよばれる支援方法により、入浴、洗濯、ひげそり、歯磨きなどを徐々に習慣化することができた事例を紹介しています。
- A様(46歳・男性)
- 知的障害 障害支援区分4
- 2014年8月 グループホーム友に入居
ご本人が希望する長期目標 → 就労をして一人暮らしをすること
―課題―
入居当初から衛生面が課題であり、入浴、洗濯、ひげそり、歯磨きは声かけを行っても1週間に1回、良くて2回行なう程度。特に歯磨きに関してはまったくおこなえていなかった。
―支援の内容―
2015年12月からトークンエコノミー法※1を用いた支援を実施。
ご本人が興味の強い、警察署見学を報酬として設定し、入浴と洗濯のトークンエコノミーを開始した。
強化子※2もご本人が承認の印として強く認識している印鑑とサインを用いている。
これにより、入浴と洗濯を行う習慣が身についた。
当初は週に5日は入浴と洗濯を行うことが目標であったが、印鑑をもらいたい気持ちが強いことが幸いして毎日入浴と洗濯が行えている。
入浴と洗濯のトークンに続いてひげそりと居室掃除のトークン表※3も作成。
2016年10月から居室掃除を、2017年2月からはひげそりを自発的に行うことができるようになり現在も継続している。
継続できている報酬として半年に1回、警察官が大好きなご本人の興味のある場所である警察署の見学の移動支援も行う。
そして就労をしたいという意識からクリアしなければいけない課題は何か本人から尋ねてこられ、面談にて歯磨きは必須であることを伝える。
すると就労への意欲からか、2018年1月からは歯磨きにも取り組むことができるようになった。
これまでのようにトークン表を用いた支援も提案したが、ご本人はそれを希望せず。
歯磨きに関しては表を用いずにおこなえるようになった。
トークンエコノミー法※1
行動療法のオペラント条件づけに属する支援方法。一定の課題を正しく遂行できたときに、あらかじめ約束した条件に従って報酬を与えることで、目標とする行動を強化します。
強化子※2
行動が増加する要因。
トークン表※3
いくつ報酬をもらったか一目でわかる表。今回の事例でいうと印鑑を押すためのスタンプカードです。
1日の流れ
友の利用者様の平日の過ごし方を大まかにお伝えします。
6:00 | 起床 |
7:30 | 朝食 |
8:00 | 服薬、歯磨き、ひげそり、身支度 |
9:30~10:00 | 通所先へ出発(通所先からの迎え) |
10:00 | 通所先にて活動 |
12:00 | 通所先にて昼食 |
13:00 | 通所先にて活動 |
16:00 | 通所先より帰所(通所先からの送り) |
16:00 | 手洗い、バイタルチェック |
16:30~20:00 | 入浴 |
17:00 | 夕食 |
17:30 | 服薬、歯磨き |
20:00 | 就寝 |