あらためて「構造化」って何だろう?

グループホーム友 世話人の芝です。
今回はあらためて「構造化」を振返ってみたいと思います。
支援における「構造化」とは、特に知的障害や自閉症スペクトラムなどをお持ちの方に対し、「何を、いつ、どこで、どのようにすればよいか」をできるだけ分かりやすく、視覚的・空間的に整理して提示する方法や考え方を指します。特に重度の知的障害がある方の場合、口頭での説明や抽象的な指示では理解が難しいことが多いため、「視覚情報」や「空間の配置」などを工夫し、活動内容を分かりやすく伝えることが大切になります。
さっそく、構造化の主なポイントと具体的な例を見てみましょう。
1. 環境の構造化
1-1. スペースの区分け
- 明確な区切りを作る
食事をする場所、作業をする場所、リラックスする場所などの“エリア”をはっきりと区別します。たとえば、色付きのテープやパーテーションを使って仕切る、床材やカーペットの色を変えるなど。
- 席や作業場所の固定
“いつも同じ席”や“いつも同じ作業机”を決めることで、利用者さんが「ここに行けば、○○をする場所」と理解しやすくなります。
1-2. 視覚的な案内やサインの設置
- 写真やイラストによる表示
たとえば、トイレのドアにトイレの写真やピクトグラムを貼る、カバンやスリッパを置く場所にイラストを貼るなど、言葉が読めない方でも理解しやすい視覚的サポートを活用します。
居室内のどこでスリッパを脱ぐのかを視覚的に示しています。
2. 活動の構造化(タスク・スケジュール)
2-1. 1日の流れを可視化する
- 個別スケジュール表の作成
1日の活動内容を時系列で並べた表を作り、イラストや写真を使って、「朝食 → 散歩 → 作業 → 昼食 → レクリエーション → …」のように順番を示します。利用者さんによって、半日ごとや今やる活動のみのイラストや写真をはることもあります。 - 実際に終わったタスクを“外す”・“めくる”仕組み
終わった活動のカードを外していく、スケジュール表のイラストをめくって“終わり”を示すなど、進捗が分かるようにします。これにより、活動の区切りが視覚的に理解でき、次の見通しが立てやすくなります。
活動ごとに絵カードを提示して、見通しをもちやすくする工夫をしています。終わった絵カードは、フィニッシュボックスに入れて、視覚的に見えなくすることで情報のコントロールを行っています。
2-2. スモールステップでの提示
- 作業手順を段階的に分ける
例えば、食事の準備をする際、「①お皿を準備する → ②席につく → ③食べる → ④片づける」といった形で工程を細かく分け、それぞれの手順を写真やイラスト、シンプルで極力短い文章などで分かりやすく提示します。 - 一度に提示する情報量を減らす
重度知的障害がある方の場合、たくさんの情報が一度に提示されると混乱しがちです。必要最低限の情報に絞って提示し、慣れてきたら少しずつ追加していくと理解が進みやすくなります。
3. 視覚支援の活用
3-1. ピクトグラムや写真カード
- 抽象的な言語より“視覚的なイメージ”が理解しやすい方が多いため、シンプルなイラストや実物写真が効果的。
- 食事、入浴、トイレ、作業などのアイコンを作成し、スケジュール表や環境の案内表示に活用します。
衣装ケースや、下膳をする場所を視覚的に提示しています。
3-2. 実際の物を活用
- 実物や立体のサンプルを見せる
たとえば「次は○○の作業をするよ」と口頭で言うだけではなく、実際に作業で使う道具を指し示す、手渡すなどの工夫も有効です。
4. 職員の関わり方の構造化
4-1. 声かけ・支援の手順を統一する
- 声かけのルールを施設内で共有
「同じ指示でも言葉のかけ方がバラバラだと混乱しやすい」ため、声かけの言い回しやタイミング、ジェスチャーをスタッフ間である程度統一しておくのも一つの手です。 - 過度な干渉を控えつつ、必要な時にフォロー
「自分でできる範囲」はできるだけ見守り、困ったときにはすぐに助けてもらえる安心感を用意しておく、というバランスが大切です。
4-2. 「順番の理解」をサポート
- 一つの活動が終わったら、そのことを本人に伝えて「次に何をするか」を一緒に確認します。
- 終わったことと、これからやることを明確に分けて提示し、利用者さんが次の行動に移りやすくします。
5. 構造化のメリット
- 見通しが立つことで安心感が得られる
「次に何をするか分からない」という不安が軽減され、パニックや混乱が起こりにくくなります。 - 活動の目的や手順が理解しやすくなる
口頭指示が難しくても、視覚情報などを通じて「今は何をすべきか」が分かりやすくなり、集中力や自主性が高まります。 - 失敗体験やトラブルを減らせる
分かりやすいルールや手順が提示されることで、誤解やミスが減り、スムーズに活動を進められます。
まとめ
重度知的障害をお持ちの方に対して「構造化」を意識した支援を行うことで、日常生活や作業への理解や参加がスムーズになり、不安や混乱を減らす効果が期待できます。環境の区切りや視覚情報の提供、スケジュールや作業手順の提示など、いくつかのポイントを組み合わせることで、より安心で分かりやすい生活環境づくりにつながります。
- 環境の構造化で場所や物の使い方を分かりやすく
- **活動の構造化(スケジュール化)**で見通しをもたせる
- 視覚支援や実際の物を活用して言葉では伝わりにくい情報を補う
- 支援の方法や声かけの統一で混乱を防ぐ
こうした取り組みの積み重ねが、安心感のある日常や落ち着いた行動につながります。構造化は「一度で完成」ではなく、利用者さん個々の理解度や生活の変化に合わせて、少しずつ調整し続けていくことが大切です。
友でも、何度も何度も構造化→モニタリング→仮説→再構造化のサイクルを回しながらご利用者の方々が安心して暮らせるグループホームづくりを実践しています。